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ひそかに大きな仕様変更があったSteemは今後どうなる?

スタート時から何回か取り上げているSteemですが、かなり大きな変更があり1年前ごろに書いた昔の記事の情報が完全に間違いになってしまっているので改めて最新の情報を書いておきます。

最後の記事からの動き

創設者が脱退

今年初めにSteemの創設者であるDaniel Larimerが開発チームから脱退しました。彼はBitSharesの創設者でもあって、去年の初めにBitSharesチームから抜け、今年はSteemからも抜け・・・ということになります。Steemからの脱退を発表したのは、「今後もうSteemには投稿もしません」と突然の謎の引退宣言をSteem上に投稿したのが最初であり、当時は物議を醸しましたが、その後訂正しチームからは抜けたものの現在も普通にユーザーとして記事をSteemに投稿しています。

脱退の理由はEOSという新しいスマートコントラクトプラットフォームの開発のためのようです。最近スケーラビリティ関連で悩まされている?Ethereumの対抗馬にもなるようなブロックチェーンであり、プラットフォーム系を昔から重点的に調べている身としては取り上げてみても面白いと思うのですが、流行のERC-20トークン(Ethereumトークン)を利用してICOを行う予定らしくICO紹介みたいになるのもなんだか癪なのでICO期間終了後(約1年後)にでも気が向いたら書くかもしれません。

Steemから脱退したからといってBitSharesほどは大きな影響はなさそうな感じで、現在も残った開発チームにより報酬変更などを行うハードフォークが頻繁に行われているようです。

仕様変更

ホワイトペーパーは現在の時点でまだ訂正されておらず、新規の人にとって現在の情報を見つけるのが非常に大変で問題な気がするのですが、去年の11月末に大きな変更が行われました。

インフレ率(通貨発行量)の変更

最初は年率100%(初年度はそれ以上)新規発行のハイパーインフレ通貨としてスタートしましたが、さすがに不評であったためか、インフレ率が9.5%/年と変更され、さらに0.95%/年になるまで毎年約0.5%インフレ率を低下させる根本的な仕様変更がなされました。超高インフレ率であったため、当初Steemには通貨単位を切り上げる株でいう「株式併合」、通貨でいう「デノミ」という暗号通貨の世界では前代未聞のイベントも予定されていたのですが、直接の言及はないもののそれも実質的には廃止となりそうです。

この変更により、SPではなくSTEEMで長期保有しているとほぼ確実に長期的には値下がりするという元々あった状況がなくなり、トレード目的でSTEEMを購入するのもアリということになりそうです。

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SteemDataより

 

供給量を上図のsupplyを見ると分かりやすいです。去年の末ごろから供給量の伸びがほぼなくなっていることが分かると思います。なお、STEEM自体の供給量は、ユーザーによるSPやSMDなどシステム内の他の通貨との交換状況により変化するので、綺麗な曲線にはなっていません。

 SP→STEEMの変換期間の変更

Steemのハイパーインフレ以上にさらに詐欺っぽい要素が「毎週に1/104回しかSPからSTEEMに変換できない」ことでした。しかし、変更後は毎週1/13を変換でき、約3ヶ月ですべての動かせないSPを他のFiatやコインに変えられるSTEEMに変換可能ということになりました。

これによりSTEEMの流動性が大きく増加し、価格形成にも大きな影響が出たと考えられるので、ホワイトペーパーで書かれていた目標はどこに行ったの?など賛否両論あります。

これらの変更が実際にいい影響となるのか、あるいは悪影響となるのかは分かりませんが、少なくとも第一印象での怪しさは大分軽減されそうです。

その他の仕様変更

同時にその他にも報酬に関わる変更がいくつかなされています。11月末の変更以外にも、全体のエコシステムに関わる変更ではないものの新規登録に関する仕様や細かな報酬に関する変更が今月も含めてしばしば行われているようです。どのような仕組み・構造でどれぐらい報酬が、記事投稿者・コメント投稿者・投票者に配分されるかは、複雑で未だに理解できていないのでこちらも省略します。

今後どうなる?

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SteemDataより

上図は投稿数の変化です。5月初めからのアルトコインバブルに合わせて投稿数が大きく増え、最近の伸びはかなり著しいものがあります。また数年後にどうなっているかは分かりませんが、最初期の滑り出しとしてはまあまあ上手くいっているのではないかという印象です。

今後のさらなる成長には、仕様上やはり暗号通貨そのものの世界への普及が大前提になってしまう感じはします。

Steemにも賛否両論があって、創設者のDaniel Larimerを含めてscamと呼ぶ人もいます。その指摘が真実かどうかは分かりませんが、現在のICOバブルにより実態があるかどうかもあやしいプロジェクトが多く存在している中にあっては、Steemスタートから1年以上たった今でも、ICO・トークンプラットフォームとか単純な通貨用途のブロックチェーン以外では、コンテンツとして実際に既に動いていてユーザーもついている非常に珍しいブロックチェーンであるため、個人的な評価はかなり上がっています。

なんでも実稼働には時間がかかるものだとは思いますが、ちゃんと動いているだけで評価できるという今の悲しい状況を早く脱してくれることを切に願いたいものですね。