ビットコインの情報サイトの運営者ブログ

サイトには掲載していない仮想通貨に関する時事的な情報や個人的な感想など。中級者以上向け。

Steemの短期的暴騰は必然だった?複雑な供給量の仕組みと流動性について

どうやら以前少しだけ書いたSteemが一週間前の10倍以上の価格となっているようです。時価総額もRippleを抜いて現在の時点で第3位になっています。仕組みが複雑すぎるので相変わらず完璧に理解できている自信はありませんが、改めて書いてみます。

前回書いたようにSteemは供給量がもの凄い勢いで増えていくインフレ型の通貨ですが、それに対応して単純にすぐ価格が下がるとも限らない事情があります。それはSP(Steem Power)という存在のためです。なお、Steemの概要については前回の記事を見てください。

SPの性質により総発行量に対して流動性が極端に低くなる

SPは送受信することが一切できず、送受信可能なSTEEMに変換するためには、1週間後に1/104分、全額を変換するには約2年間かけなければなりません。

現在の送受信可能なSTEEMの量は?

現在のSTEEMの供給量はsteemd.comから確認できます。「current_supply」が総供給量で現在のところ、98,395,492.884 STEEMとなっています。(coinmarketcapに表示されているavailable supplyはSteemの開発企業Steemit Inc.が保有している分を除外しているためやや少なく表示されているようです。)

そのうちSPの供給量にあたるのが、「total_vesting_fund_steem」の欄で、現在96,263,193.852 STEEMです。

よってすぐには送信できないSPが96,263,193.852/98,395,492.884 = 97.8%を占めることになります。正確に言えば、送信できないSTEEMはさらにまだあり、「total_reward_fund_steem」の欄の56,479.464 STEEM、これはSteemへの投稿や投票の報酬として支払われるために確保されているSTEEM(SP)の量です。これらを足し合わせると送信できない割合は、(96,263,193.852+56,479.464)/98,395,492.884 = 97.9%ということになります。

つまり、実質的に取引所で取引を行える最大のSTEEM量は98,395,492.884 - (96,263,193.852+56,479.464) = 2075819.568 STEEMで全供給量の約2%となります。

7月4日の初報酬支払日以降ユーザー数が増加

7/4に初のSteem報酬支払日がありました。4日以降ユーザー数は右肩上がりに増え、STEEM(SP)への需要が増しました。4日には前日3日の3倍(約150人)の新規ユーザー、昨日12日は約20倍(約1200人)の新規ユーザーを獲得しています。

※7月4日以降は1日1回(各投稿or投票の24時間後)報酬をもらえることになっています。

総発行量・時価総額に対して流動性が極端に低い状況に

ユーザー数が増えると当然需要が増えることが予測されますが、Steemの場合、総発行量や時価総額に対して実際に市場で取引を行える供給量が極端に少なくなっています。最も主要な取引所であるBittrexを見ると、時価総額3位のコインである割にはSTEEMの取引板は非常に薄くスプレッドも広く、出来高も価格上昇率の割には低いことが分かります。

通常の他の仮想通貨の場合は、既存のホルダーがすぐに売り注文を出すことによってある程度に価格上昇が抑えられますが、STEEMの場合は売りたくても売れない状態のため、下げ圧力が非常に少なくとんでもない価格上昇になってしまったのだと考えられます。

しかし、この状態が長く続くわけではなく、急騰により既存ホルダーの一部が一週間かけてSPからSTEEMに変換することが考えられるので、流動性が増すことが考えられます。ただし、これもわずか1/104という量なので正直なところ値動きを読むのは難しいです。

供給量の仕組みについて

ここで一旦供給量の仕組みについてまとめてみます。

STEEMは基本的にSPのかたちで新規発行され、90%がSP保有者にそのまま還元され、10%はコンテンツの投稿や投票の報酬として支払われます。

絶対量としては最初は1分毎に800STEEMが発行されますが、年率100%ペースに到達すると常にインフレ率100%を保つようにさらに800STEEMを超える量が発行されます。現在は約1億STEEMですが、1年後には5億STEEM、その3年後(今から4年後)には50億STEEM近くになると予測されています。初年度の今は数百%のインフレ率になっていると考えられます。数分後にSteemitのウォレットを見るだけでわずかにSPの量が増えているのが確認できるほどのインフレ率です。

とんでもないインフレ率なので、50億STEEMとなることが予測される32,000,000ブロック毎(約3.32年)に「株式併合(reverse split)」というイベントも予定されています。

株式併合といっても馴染みがない人は、いわゆるデノミと考えると分かりやすいです。つまり強制的に通貨単位の切り上げが行われ、10STEEMが1STEEMとして取り扱われ、価格も10倍になります。1/10に切り上げられるので、供給量は50億STEEMから5億STEEMに戻るというわけです。reverse splitのサイクルは常に続き、STEEMの供給量は5億STEEMから50億STEEMの間を循環することになります。

※SMD(Steem Dollars)はSteemの時価総額の約5%発行されるようになっています。STEEMの新規発行量には直接関係なく、まだよく理解できていないので触れないでおきます。

「通常の状態」ならSTEEMの価格は下落する

現在はSTEEMの価格がとんでもなく暴騰していますが、よっぽど高い水準で需要の伸びを維持しない限りSTEEMの価格は下落傾向になるはずです。もし原理的に少なくとも一定の価格が保てるなら、SPを保有しているだけで年率90%、初年度の今は数百%増やせるSPホルダーは、永久に資産価値が増えていく夢の通貨が出来上がってしまうことになります。4年後には今の供給量の50倍ぐらいになっているので、時価総額ビットコイン越えも現実的になってしまいます。

STEEMの価格下落は問題にならない?

SP保有者にとっては2年目以降は年率90%増える計算になるので、それ以上の分だけ価格が下落しない限り、例えば年間で30、40%程度STEEMの価格が下落したとしても資産価値としては増えていることになります。インフレ率100%というと高すぎるように思えますが、SP保有者から見れば実質的なインフレ率は10%にしかすぎないと言うことも可能かもしれません。

逆に、SPとしてではなくいつでも送信可能なSTEEMを長期保有することのリスクは非常に高いといえます。

ただし、SPはSPで1週間に1回1/104しか資産を引き出せないリスクも存在します。年単位で保有するつもりの人は迷わずSPとして、短期間のトレードを行いたい人はSTEEMもありでしょう。

実際に使いたい場合は?

実用面でいうと、日本人が使うには正式に日本語対応していないなどまだまだ使うのには不便な面も存在します。

例えば日本語の場合は投稿の際のタグの先頭に「ja-」と言語のタグを付けるなどの方法が推奨されていますが、ローカルルールでしかなくほとんど形骸化してしまっています。多言語投稿はちらほら見られますが、例えばロシア語の場合は「ru」だけで投稿したり、フランス語の場合は「steem-fr」と後ろに言語を付けたり、投稿者が自由に投稿している状態です。

実用面はアップデートによる改善を期待するしかありません。

最後に

相変わらず理解しきれていないものの、改めてまとめてみました。個人的にSNSという分野にそれほど興味はありませんが、Steemについては、技術と経済的インセンティブの組み合わせという点にビットコインと共通するものがあり興味を持っているので、これからも見守っていきたいと思います。