ビットコインの情報サイトの運営者ブログ

サイトには掲載していない仮想通貨に関する時事的な情報や個人的な感想など。中級者以上向け。

最近よくある仮想通貨の投資話からICOについて改めて考えてみる

なかなか個別の案件を見る時間がなく全然追いついていないのですが、最近もICOを行うプロジェクトが次々と出てきており各所で話題にもなっているようです。もしアドバイスを求められたら、この手のスタートアップは、仮想通貨業界に限らずほぼ確実に将来潰れてごく一部しか生き残らないので、とりあえず失敗して10年後には無くなっている、とでも言えば大体当たると思います。

しかし、こんなICOでもまだましだと思うことがあります。それは、最近身近なところでもしばしば耳にする仮想通貨の投資話です。仮想通貨に関する話題が一般にも広まってきたのは喜ばしいことかもしれませんが、その裏で詐欺も広まるということは好ましいことではありません。実際のところ詐欺の証拠を掴むのはとても難しく、詐欺かどうかはわからないのですが、一般的なICOのスキームと比較すると非常にお粗末なものなのです。そのため、身近な投資話に惑わされそうな人の説得や、勧誘をしてくる不届きもの相手には詐欺と言って一蹴するのではなく、単純に失敗する可能性が高いと説得する方が相手の心には響くかもしれません。

そもそもICOとは何か

Initial Coin Offeringの略で株式の世界のIPO(新規公開、Initial Public Offering)に対応するものです。ICOではそのコイン、仮想通貨の開発者が新しく発行したコインを売りに出すことで、プロジェクトの資金調達を行うことになります。

IPOになぞらえられていることからコインがプロジェクトの株式に例えらえることもよくありますが、プロジェクトによっては、送金手数料としてしか利用できなかったり、何らかの投票が可能で議決権を持っていたりいなかったり、あるいは持っているだけで配当のようなものがあったりなかったり、性質は様々で株式と必ずしも一致するものではありません。

利用者としては、むしろクラウドファンディング的なものをイメージしたほうが良い場合が多いと思われます。

そもそもProof of Workでコンピュータによる採掘・発行が可能な仮想通貨以外は、すべてIPO的な形態を経て利用者に仮想通貨を配布しなければなりません。逆にICOを行わない仮想通貨というのは、Proof of Workしかないと言えるでしょう。(Proof of Workであっても事前採掘を行いICOによりユーザーにコインが配布されることもあります。)

一般的なICOの特徴・傾向

ICOにおいて重要視されるのは、①公平性②透明性の2点です。②の透明性は正直微妙なものもかなり多いのですが、特に公平性というのは仮想通貨の世界でかなり重要だと考えられています。

例えば、当時機能だけを見ればMastercoin(Omni)のクローンでしかなかったCounterpartyは公平・透明なICOとしてProof of Burnにより配布を行ってアピールし、すぐにMastercoinを追い抜きました。Proof of Work型のMoneroも公平なスタートをアピールして、クローン元そのものであったBytecoinを追い抜きました。

(もっともこれらはその後の開発状況が優れていたのも大きな成功要因だと思われます。)

スタートが不公平であったと言われるDashやNxtは失敗とは言えないものの、常に不公平という批判にさらされ続けています。

中には公平性や透明性の観点から、事前採掘されているコインはすべて詐欺、ICOを行うコイン(≠Proof of work)はすべて詐欺、とまで言う人もいます。

 お粗末な仮想通貨の投資話の例

しかし、上記の(海外の仮想通貨コミュニティを見れば)常識的なことを全く知らないとしか思えないさらに残念な投資話も最近は横行しています。

また、ブロックチェーンの利点をほとんど無視している話も多くあります。ICOは個人で世界中どこにいても少額から参加できるというのが良い点であり、これらの特徴を無視するからには相応の理由をきちんと説明してほしいものです。

地域限定販売

よく見かけるのが日本だけ先行販売という手法です。もし、地域通貨としてのプロジェクトならばアリだとは思いますが、そうでなければ意味がよくわかりません。世界規模で成長をしていきたいのなら公平性という点で大きな弱点を抱えることになるでしょう。

世界中どこからでも一瞬で送金できるというブロックチェーンの利点を無視しており、馬鹿にしてるとしか思えません。

宣伝場所が限定的

この手のお粗末な投資話はセミナーが一般的であり大抵bitcointalkなどの主要コミュニティでは宣伝されていません。一部でこっそりとICOを行うやり方は忍者ローンチ(ninja launch)と呼ばれ公平性を損なうため嫌われる手法の一つです。

ごく一部の人の間だけで流通させたい特殊なコインならいいのですが、世界展開したいなら大きな弱点です。

購入金額に最低金額が設定されている

ブロックチェーンの利点は世界中のどこからであっても1円でも低手数料で送金できるということにあります。それに対応するかたちで一般的なICOでも最低金額は設定されていないのが普通です。数百円とかならまだしも最低○万円などというのは論外です。

必ず値上がりすると宣伝されている

この世に永続的に必ず値上がりする仕組みというものは残念ながら存在しません。もしポンジスキーム(自転車操業)のように必ず儲かる仕組みが入っているなら、そのあとに必ず破綻する仕組みが含まれているということを示しており、逆に危険であると自ら宣伝しているようなものです。

ビットコインも必ず値上がりすると宣伝されることがよくありますが、実際はそうではないのでそうやって勧誘するのは正直どうかと思います。また、気持ちはわからなくもないですが、最近はまじめにやってそうなところでも運営側・開発側でコインの売買を煽るようなコインもしばしば見られ、外から見てる側からすると印象が悪くなるだけでは?と思ってしまいます。

一番恐ろしいのは「普通の」ICO

明らかに詐欺っぽいプロジェクトや失敗しそうなプロジェクトはまだ良いのですが、最もひっかかりやすいのが「普通の」ICOです。過去の一見真面目なプロジェクトもICOだけやってほとんど消息不明であったり、1年2年と経っていまだにスタートしてない、トークンを受け取れないというものも数多くあります。

詐欺だろうがそうでなかろうがICOの非常に大きいリスクはトークン配布が実際行われるのかわからない、あるいは配布が行われた時点の価格が全く不明という点です。ハイリターンかもしれないがハイリスクのICOに参加するか、あるいは公開後にいつでも売買可能な取引所でトレードするか、ちゃんとリスクを認識して投資するようにしましょう。