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WAVESの不安点とScorex

いきなりこんなディープな話題を取り上げるつもりはありませんでしたが、ちょうど今この話題が仮想通貨界隈で盛り上がっており、個人的にも少額だけ参加しているので書いてみたいと思います。

WAVESとは?

WAVESとは昨日12日の21時よりICO(先行販売、クラウドセール)が始まったビットコイン2.0系の仮想通貨です。開発チームリーダーは同じくビットコイン2.0系仮想通貨のNxtのコミュニティの一員であるCoinomatです。

まだICO開始から1日も経っていないのですが、この記事を書いている時点で4,000BTCも集まっています。これは約2億円というものすごい金額になります。

WAVESの大体のイメージとしては、Nxtのコピー+αと言って良いでしょう。将来的にはいろいろと改良が提案されているようですが、リリース時は現在のNxtと全く同じピュアなProof of Stakeを実装するようです。実際にNxtのコミュニティが分裂するかたちでWAVESが発表されました。

なぜNxtから分裂したのか?

一言でいえば、Nxtの開発方針が気に要らなかったからだと思われます。ここでは詳しくは書きませんが、最近になってNxtの開発チームから「Nxt 2.0」へのバージョンアップの計画が発表されました。この計画では、Nxt上に作られている独自通貨(アセット)の価格が大きく下がる懸念があると言われています。CoinomatはNxt上でアセットを発行してビジネスを行っているため、価格が下がると困るというわけです。ちなみに、Coinomatはコミュニティメンバーではありますが、Nxtの開発チームには加わっていません。

他にも、Nxtは最初のICOが不公平と言われており昔から仮想通貨界隈にいる人たちからは敬遠されて、いくら新機能を実装してもなかなか人気が出なかったり、開発チームに要望を出しても受け入れられなかったりというフラストレーションが溜まっていたものと思われます。

WAVESの不安な点

①不具合だらけのICOスタート

メールが届かない問題

WAVESのICOに参加するためにはメールアドレスを登録して送られたメールを確認する必要があります。しかし、多くのICO参加者からメールが届かないという問題が報告されました。迷惑メールに分類されているだけの場合もあるようですが、海外掲示板などの反応を見ているとどうも全くメールが届かない事案も多くあるようです。

WAVESの残高が表示されない問題

WAVESを購入するためには、ICOページにログインして表示されるアドレス宛にBTCを送信する必要があります。しかし、BTCを送信したのにWAVESの残高に反映されないという報告が相次ぎました。現在は修正され反映されるようになっているようですが、参加者全員が詐欺ではないか?と頭によぎったはずです。

ICOの参加状況が全く透明じゃない問題

WAVESでは、ICOの透明性を確保するとしてイーサリアム上でコントラクトを作成し、以下のページから誰でもICOの参加状況が見れるようになるはずでした。

Waves Presale

開始数時間は稼働していたものの、現在はバグのためかキャパシティを超えたためか完全に停止し見れなくなっています。ICOの参加状況は公式サイトからBTCの額を確認するしかありません。

原因は不明ですが、すでにイーサリアムのコントラクトは停止しており、一度実行したコントラクトのコードは二度と修正できないので、復旧の見込みは少ないのではないかと思います。

※追記:現在は表示されるようになっています。コントラクトが停止したわけではなく、アクセス集中により一時的に正しく表示されなかっただけかもしれません。

②開発チームの技術力不足の懸念

WAVESの公式ブログ記事、FAQ. Q&A about WAVES: — Waves Platformによれば開発メンバーは以下の通りです。

Q: Who are the NXT developers involved in WAVES?

A: Devs involved: JL777, Kushti, Tosch. Project leader, Coinomat at NXTforum.

この中で、Coinomatにコーディングはできないと言われており、リーダーとしてマーケティングや企画等を中心に行うものと思われます。JL777は、SuperNETというNxtと連携した複数仮想通貨の管理プラットフォームをリーダーとして開発しています。KushtiはNxtの元コア開発者でした。Toschのことは良く知りませんでしたが、サイトを見ると元々JavascriptやPHP等のWeb系のプログラマーでSuperNETの開発などにかかわっていたようです。

WAVESの開発基盤

WAVESはホワイトペーパーを見る限りNxtのほぼコピーと考えて良いと思いますが、Nxtのコードを利用するわけではなく一から作成されるようです。そしてその開発基盤として「Scorex」というものを利用するとしています。

Scorexとは何か?

github.com

Scorexは、先のNxt元コア開発者であったKushtiが2014年末から開発を続けているブロックチェーンのフレームワークとあります。要するに、NxtやQoraのProof of Stakeを採用した仮想通貨を誰でも簡単に作れるプラットフォームのようです。

(わかりやすい詳細なドキュメントがなく、私は開発言語のScalaが読めないため不正確かもしれません。)

このScorexプロジェクトは、イーサリアムなどの開発に一時期かかわっていたチャールズ・ホスキンソン氏が代表を務めるIOHK社が後にスポンサーとなっています。KushtiもIOHK社の一員になっているため、実質買収といってもいいかもしれません。開発自体はチャールズではなくKushtiが中心となってそのまま続けているようです。

日本の一部でも有名なチャールズやIOHKの詳細については触れないでおくこととして、そのチャールズがWAVESのICO開始直後というなぜか絶好なタイミングで海外掲示板のbitcointalkにこんなスレッドを建てました。

IOHK Research and Scorex ARE NOT working with Waves

まとめると、Scorexの開発チームはWAVESチームと一緒になって開発しているわけではないという内容です。チャールズが始めたスレッドですが、Kushti自身も、ScorexはオープンソースだからWAVESが使用しているだけで、そのこと自体はCoinomatと話をして把握しているが、自分はWAVESの技術的詳細まで関わっていないというような反応を返しています。

WAVESの公式ブログやサイトを隅々まで見返してみると、実際に本格的に開発チームに入っているのはCoinomatとToschだけで、Kushtiはせいぜいアドバイザーとしての役割だけということがわかります。JL777もアドバイザーとなっていますが、印象としてはより積極的にプロジェクトにかかわっている印象は受けます。ただし、Scorex自体の開発とは関係していないようです。

Scorexは信頼できるのか?

このようにWAVESはScorexに依存している(と思われる)プラットフォームです。しかし、そのScorex自体は別のチームが開発しているということになり、第三者にシステムの根幹を任せているということでもあります。その第三者が十分に信頼できる人間でありなおかつそのシステムの稼働実績があれば、大きな問題とはならないかもしれませんが、ScorexのGithubページにもバグの多い初期段階のバージョンとあり、不安にならざるを得ません。

WAVESへの期待

と、ここまで長々書いてきましたが、そもそもWAVESのホワイトペーパーにはScorexを利用するとしか書いておらず、詳細は不明な状況でただの杞憂かもしれません。また、すでに多額の投資金が集まっているので、その資金を元に優秀な技術者を雇うことができるかもしれません。実際に、ScorexだけではなくC++を元にしたフルクライアントも後に作成する予定と書かれてもいます。

Nxtは機能に着目すれば面白いプラットフォームでありながら、不公平なICOと言われて不人気だった面があるので、今回のWAVESでぜひ成功してほしいと思っています。

(個人的にはNxt2.0のほうが技術的に興味を持っていますが・・・。)

※本記事はWAVESが詐欺ではないという前提を元にかかれていますが、詐欺である可能性を完全に否定することはできません。ICOというものはほとんどが詐欺であるか、詐欺でなくても失敗する確率が非常に高いと思います。十分注意して参加してください。